機械学習の業務を依頼するにあたっては、「機械学習」とひとくちでいっても、依頼する内容や範囲によって、頼むべき相手(企業・個人)が変わってきますので、注意が必要です。
基本的には、依頼する業務の内容と範囲をまずは明確にして、その内容・範囲にマッチした依頼先に対して、業務内容と範囲を明確に示しながら業務の相談をすることにより、業務発注後のトラベルを避けることができます。
機械学習に関する業務を依頼する難しさと注意点
「機械学習」に関する業務を外部の企業や個人に発注をして作業依頼するにあたって、「機械学習」に初めて取り組む場合などには、依頼したい業務が「どこまで」なのかが明確に認識できていない場合もありますので注意が必要です。
・機械学習に関する特定ツールの使い方を教えてほしいだけなのか、機械学習に関する実務経験を背景にした機械学習におけるモデル選択のアドバイスや学習用のデータをどこで集めたほうがよいかについてのアドバイスまで求めるのはだいぶ難易度の異なる依頼業務です
・たとえば学習結果としては十分高い評価スコアが出ているにもかかわらず、現場に適用すると誤答が多いと指摘されるのでどうしたらよいかということを相談するということは、機械学習を適用しようとしている「対象」について詳細に理解した上で、どのようなモデリングが適切なモデリングかについての判断を行うとともに、学習用のデータとして用意されたデータが現場の状況を十分にカバーしているかどうかの確認までしていく必要がありますので、単に機械学習の基本的な知識をもっていて特定のツールの使い方がわかっているだけの人では対応ができない場合があり得ます。
以下のようにまずは依頼業務の内容と範囲を整理した上で、依頼業務ごとに適した委託先を選定する必要があります。
ち
依頼業務の内容と範囲を整理する (整理して提示可能とする)
⇓
依頼業務の内容と範囲に適した委託先を選定する
(必要であれば、業務ごとに委託先を分ける)
ち
以下では、まずは機械学習に関する依頼業務としてどのような業務に分類できるかの説明と、簡単なQAに答えていくことにより依頼業務を整理してくれる「診断ツール」を紹介します。また、機械学習における業務分類ごとに、どのような企業に相談するとよいか、それぞれの分野における代表的な企業のご紹介をします。
機械学習に関する業務委託といったときに、大きくは「うまく学習されたシステムを構築する」ことのコンサルティング・サポート関連の業務と、機械学習のシステムを設計・構築して運用する業務に分かれます。
「うまく学習されたシステムを構築」できずに業務を依頼する場合にも、課題はいろいろな種類が存在し、提供してほしいサービス内容には違いがあります。またそれに対応して、委託先として求められる能力にも違いがあります。
以下は、機械学習システムを構築するにあたっての課題を分類一覧して、それぞれについてどのようなサービス内容を委託業務として提供してもらう必要があるのかを一覧表にしてまとめてあるものです。
大分類 | 中分類 | 小分類 | 課題 | 委託業務 |
機械学習に特有の課題 | クラウドの機械学習サービスの使い方がわからない | AWSの機械学習 | 使い方がわからず結果が出せない | AWSの機械学習サービスの使い方の解説 |
結果は出るもののエラーとなる | 操作手順、入力データを提示してもらった上で、エラーとなる理由を明らかにし、解決策を提示する | |||
AZUREの機械学習 | 使い方がわからず結果が出せない | AZUREの機械学習サービスの使い方の解説 | ||
結果は出るもののエラーとなる | 操作手順、入力データを提示してもらった上で、エラーとなる理由を明らかにし、解決策を提示する | |||
GCPの機械学習 | 使い方がわからず結果が出せない | GCPの機械学習サービスの使い方の解説 | ||
結果は出るもののエラーとなる | 操作手順、入力データを提示してもらった上で、エラーとなる理由を明らかにし、解決策を提示する | |||
学習結果は出るもののうまく使いこなせない | 適切な設定をしているかわからない | パラメータ設定が適切かわからない | 対象についての説明、入力データ・モデル選択からパラメータ設定および学習結果を提示してもらった上で、設定したパラメータが適切かどうかのアドバイスを提供する | |
学習結果の解釈の仕方がわからない | 入力データ・モデル選択からパスラメータ設定および学習結果を提示してもらった上で、学習結果の評価の解釈を説明する | |||
データの用意の仕方が適切かわからない | 対象についての説明、入力データ・評価用データの用意の仕方を説明してもらった上で、データの用意の仕方についてのアドバイスを提供する | |||
評価スコアが上がらない | データを十分に集めていると思われるがスコアが上がらない | 入力データ・モデル選択からパラメータ設定および学習結果を提示してもらった上で、データを増やすべきか/パラメータを修正すべきかのアドバイスを提供する | ||
十分にデータを集められていないと思われる | 取得すべきデータに関するコンサルティング・アドバイスあるいは、データに対する前処理のアドバイス | |||
現場で使えないとの指摘を受ける | 学習結果のスコアはよいが現場適用すると誤答が多いとの指摘を受ける | 学習時の目標設定が現場適用に十分な値ではなかった | 現場からの指摘、入力データ・学習対象・学習結果を提示してもらった上で、現場での適用可能となる目標を新たに設定し直す作業のサポート・コンサル | |
そもそも現場での分類の基準があいまい。学習データの分類基準も特になく担当者が独自に決定 | 入力データ・学習対象および分類の基準についてヒアリングして、 分類の基準を明確にして、その基準にのっとった学習データのアノテーションのやり直しを促するコンサル | |||
誤答とされる例は学習データに含まれない場合が多い (学習データが不適切) | 入力データ・学習対象・学習結果および現場で誤答となるデータを提示してもらい、 誤答とされる場合は学習データに含まれない場合であることを確認した上で、学習データとして追加すべき場合(条件)を明確にするコンサル | |||
なぜ現場適用すると誤答が多いかわからない | 対象についての説明、入力データ・評価用データの用意の仕方を説明してもらうとともに、入力データ・学習対象・学習結果および現場で誤答となるデータを提示してもらい、現場適用すると誤答が多くなる原因をまず明確にするとともに、その原因に基づいた対策までを見直し明確化するコンサル | |||
使いにくいとの指摘を受ける | 現場での操作負担が重い | 現場での作業のヒアリング等をもとにした機械学習システムのヒューマンインタフェースの検討 | ||
応答速度が十分ではない | ・現場での応答速度の計測・確認のサポート ・必要な目標応答速度の設定のサポート ・現在の現場でのシステム内容を提示してもらい、目標応答速度を実現するためのシステム構成を検討 | |||
システム設計構築・運用 | 業務設計 | 分類の設定や判定基準・KPIの設定 | – | 機械学習の分類設定・各分類の判断基準の設定やKPIの設定をサポートするコンサル |
データの収集方法や収集すべきデータ量設定 | – | 機械学習システムのデータ収集方法・取得すべきデータに関するコンサルティング・アドバイス | ||
データの前処理方法 | – | 機械学習システムの学習データに対する前処理のコンサルティング・アドバイス | ||
機械学習モデルの選定・設計 | – | 機械学習システムの機械学習モデルの選定・設計関連のコンサルティング・アドバイス | ||
システム設計構築運用 | アーキテクチャ選定 | – | 機械学習のシステムを構築するのに適したアーキテクチャ設定・選定。そしてそのアーキテクチャでのシステム設計構築まで | |
パフォーマンスチューニング | – | サイジングを含むシステム設計および開発。現場での応答速度の計測、目標応答速度の設定サポート、そしてその目標応答速度を実現するためのシステム設計構築まで | ||
その他のシステム設計・開発 | – | 対象は機械学習のシステムではあるものの、委託業務としては一般的なシステム設計および開発業務 | ||
リリース後のシステム保守運用 | – | 学習システムおよび学習した結果を用いた、現場に適用される予測システムのシステム保守・運用業務 |
- 機械学習特有の業務依頼か
- これからあなたが依頼したいと考えている業務の整理をしていきます。 まずは、あなたが委託したい業務は、
機械学習に特有の学習モデルの構築や予測システム構築を ある段階まで進行させた中での課題解決の依頼ですか、 あるいは業務開始前での機械学習のシステムの システム設計・構築あるいは運用に関する業務依頼ですか ?
機械学習に関連した業務を委託するにしても、委託する業務の種類によって、委託先として適している企業が変わってきます。
機械学習に関する業務の分類やYes/No chartにこたえていくことにより、委託しようと考えている業務がどのようなものであるのか、整理して解説する診断ツールなども別のタブにありますが、
本タブでは、機械学習に関連した業務を委託できる企業を代表的ないくつかのグループに分類して紹介します。
1) AI開発に特化したシステム開発会社
機械学習に特化したシステム開発会社です。設立から10年もたたない新しい会社がほとんどで、企業規模も数十名程度の企業が大部分です。機械学習に関連した業務を委託する先としてイメージされる、ひとつの典型的な企業群です。
大規模なシステム開発までを委託する先としてはリスクがありますが、機械学習に特有の学習モデルの構築や予測システムの構築をある段階まで進めた中で発生した課題の解決を依頼する先としては適した先です。規模はまだ大きくはなくても、機械学習やAIに興味をもった人が集まっていて、機械学習やAIの可能性を信じていている人たちが集まっている企業です。業務遂行上の困難が少々あったとしても、なんとか解決しようと頑張ってくれることもあるかもしれません。
以下、AI開発に特化したシステム開発会社の例です。
会社名 | 特徴 |
株式会社 Ridge-i | ・博士号をもっている人たちが創立して、株主にリコーや荏原製作所なども
・最先端技術を取り入れた課題解決のプロフェッショナル集団 |
ブレインズテクノロジー株式会社 | ・機械学習を活用したデータ検索およびデータ分析製品・サービスの開発、提供を行っている従業員数35名ほどの企業 |
株式会社SIGNATE | ・AI開発人材ネットワーク「SIGNATE」の運営やAI人材の育成・採用なども手掛けるとともに、AI開発も |
株式会社KUNO | ・機械学習の受託開発コンサルティング企業。特にディープラーニングによるAI開発を得意とする |
株式会社LABORO.AI | ・人工知能技術を用いたソリューション開発、コンサルティングを行っている従業員数20名ほどの企業 |
2) データ分析系の企業でAIに力を入れている会社
Webサイトの分析だけでなく、しばらく前から「データサイエンティスト」や「ビッグデータ」のようなバズワードも出てきたのにも対応して、データ分析系に特化した企業、データ分析に強い企業群が存在します。ビッグデータに対してさまざまな分析を加えるアプローチの中でAIにも取り組むのは自然な方向性ですが、データ分析系の企業でAIにも力を入れているという会社がいろいろあります。やはり大規模なシステム開発の委託先としては向いているとはいえませんが、データ分析のための機械学習案件や業務プロセスの最適化のための機械学習業務の委託先としては候補となると思います。
以下、データ分析系の企業でAIに力を入れている会社の例です。
会社名 | 特徴 |
株式会社ブレインパッド | ・SAPパートナー。オールインワン機械学習プラットフォーム “SAP Data Intelligence”の販売およびそれを用いた分析業務を提供
・機械学習やAIを用いて業務改革や業務の高度化などを行う、業務プロセスの最適化支援も提供 ・機械学習による分析サポート機能を有する分析ツール “BrainPad VizTact”なども開発して提供している |
3) AWS/AzureやGCPなどのクラウドのAIサービスの利用サポートをしてくれる会社
AWS/Azure/GCPというクラウドのサービスは、機械学習/AIのサービスを用意しています。かなり充実した機能を提供しているからこそ、使い方がわからない/うまく使いこなせない等の課題をもつ人も多いのではないかと思います。機械学習に関する豊富な実績や深い知見までは求めておらず、自分が使おうとしているクラウドの機械学習/AIのサービスの利用サポートをしてもらいたいということであれば、上記の1) や 2) のような企業群よりも、クラウドのサービスの利用サポートをしてくれる企業の中から、そのクラウドの機械学習/AIサービスもサポートしてくれる企業を選んで相談するのが委託先としては適しています。
以下、クラウドのAIサービスの利用サポートをしてくれる企業でAIサービスのサポートもしてくれる会社の例です。
会社 | 特徴 |
クラスメソッド株式会社 | ・6年連続でAWSの最上位コンサルティングパートナとして認定されている、AWSの利用サポート業務を行う代表的な企業のひとつ
・Amazon SageMakerなどのAWSの機械学習サービスを活用したシステムの導入支援を行います |
4) ITコンサル系で機械学習/AIにも力を入れている会社
システム開発系の企業の中には、ITコンサル系といわれたりする企業群がありますが、その中には機械学習/AIにも力を入れているところがあります。ITコンサル系の会社ですので、現場でのヒアリングからはじまり、課題を解決するための業務設計なども含むコンサルティングなども行ってくれ、その結果をもとにシステム設計からシステム構築・運用まで請け負うタイプの企業群です。もちろん、IBMやアクセンチュアのような超有名な大企業もコンサルからシステム開発まで請け負いますが、そこまでの大企業に委託するほどの規模・金額の案件ではない場合に委託する先として、中堅規模のITコンサル系企業の中にも機械学習/AIにも力を入れている会社が存在します。
以下、ITコンサル系で機械学習/AIにも力を入れている会社の例です。
会社 | 特徴 |
フューチャーアーキテクト株式会社 | ・各種AI活用コンサルティングサービスを提供
・AIエンジニア・AIコンサルタントを継続的に積極採用 |
Avintonジャパン株式会社 | ・機械学習とインフラ構築に強みを持つITコンサルティングとシステム開発の会社
・従業員数 約200名 |
スカイウイル株式会社 | ・AI、ビックデータ、クラウドに注力している、アプリ開発やインフラ構築に強いITエンジニアの会社 |