7月5日から7日まで品川プリンスホテルにて開催されたIT Japan 2017。今年のテーマは「デジタルイノベーションで創る競争戦略」。今年もIT系の代表的な企業の社長のプレゼンも多数行われたイベントです。AIやIoTなどに関する話題も多かったようですが、IT・クラウドに特にフォーカスしてご紹介していきます。IDC Japanの発表によると、2016年の国内クラウドITインフラストラクチャ市場は前年比17%増の1,432億円、その中でもパブリッククラウドは前年比25%増加の913億円になったとのこと。日本でもメインストリームになってきたクラウド・IT、その向かう先を感じさせるプレゼンをピックアップしてご紹介します。

掲載メディアはIT Japan 2017を主催する日経BP社の運営するIT ProのIT Japan 2017速報となります。

「クラウドで日本の労働生産性を高める」、日本オラクルの杉原氏

日本オラクルの取締役会長を務める杉原博茂氏の講演です。クラウドによる労働者一人当たりの生産性を高めることにより日本全体の成長を実現することを主題にしています。

その中で紹介していた数字が現状の日本のITシステムに使われている予算の分野別の内訳です。伝統的なITシステムの場合、1年間に14兆円使われている中で、内訳の大きいのは、導入/構築の4.7兆円、運用のアウトソースの3.6兆円、サポートの1.3兆円で、ハードウェアの8,600億円やソフトウェアの1兆円などよりかなり大きな割合となっています。

それに対してパブリッククラウドに移行することにより、すぐに使い始められ他システムとの接続性や拡張性が保たれるなどの側面からTCOを削減できると紹介しています。

日本オラクルはどちらかというと伝統的なIT企業のイメージですが、そのような企業でもクラウド移行を顧客にすすめているのは、クラウドのメインストリーム化を感じさせられます。

 

「感動する顧客体験がビジネスの成否を決める」、セールスフォースの山賀氏

セールスフォース・ドットコムで専務執行役員デジタルイノベーション事業統括を努める山賀裕二氏の商品サービス開発における顧客体験の重要性をテーマとした講演です。

その中でとりあげていた数字が、自動車を購入する際の販売店に足を運ぶ回数の変化です。人々が自動車を購入する際には、ネットなどを使って事前に情報を収集して、どの車を購入するかを決めてから販売店に行くことが多くなった結果、販売店に足を運ぶ回数が平均して7.5回あったものが現在では1.5回に減ったとのこと。人々が販売店に行く目的は実際に乗ってみることと金額の交渉だけになったと紹介しています。

RIZAPの事例紹介も興味深いものです。もともとダイエット食品を通販で販売していたRIZAPがダイエットの最大の敵は「一人では続けられない」ことに気がつき、やせるという顧客体験を提供するためには、専門家が顧客に寄り添う必要があり、専門家が顧客に寄り添うダイエットのためのサービスとしていまのビジネスモデルを作り上げたとのこと。

クラウド・ITが加速するイノベーション。営業ツールとしてのSalesforceを提供する企業とのイメージが強いですが、クラウドのサービスを提供することにより新たな顧客体験を提供しようとする企業のサポートをする企業となることを目指しているのが感じられる講演です。

 

保守費を削減すればイノベーションにお金を使える」、日本リミニストリートの脇阪氏

日本リミニストリートで北東アジア統括ジェネラルマネージャー兼日本支社長を務める脇阪順雄氏のITサービスにおける保守費用の削減の可能性と新しいビジネスモデルを生み出すことの大切さをテーマとした講演です。

その中であげていた数字が、ITコストの89%は保守に使われているというものです。新しいことへのコストが11%だけということで、これでは新しいビジネスを開始することは難しくなるとのことで、日本リミニストリートがやっていることは、保守費用の削減のために優秀なエンジニアが標準プロセスにのっとってキッチリとやっているだけとのことです。

 

「センスある経営者は、組み合わせではなく順列で戦略を考える」

最後に、一橋大学大学院の国際企業戦略研究科教授の楠木 建氏の講演を紹介します。

ビジネス(商売)全体を動かして成果を上げる「経営者」に求められるのは「センス」で共通項として挙げられる特徴として「分析よりも総合」「何をしないかを決断できる」「思考が直列」「抽象と具体の往復運動」「インサイドアウト」の5点をあげています。

「思考が直列」では、時間軸を考慮した戦略の立て方が重要として、「優れた経営者は、『どういう順番で戦略を打ち出すか』という点を意識している人が多く、そこにセンスが問われる」とのことです。

クラウド・ITはイノベーションを加速することを可能にしますが、具体的にどのようなイノベーションを行うかは、経営者のセンスが問われるということかもしれません。