アスキーエキスパートの帆足さん、MITメディアラボ所長の伊藤穣一さん、元チェスチャンピオンでIBMのディープブルーに敗れたということで有名なカスパロフ氏、そしてBIツール「Qlikview」のメーカであるQlik TechnologiesのCTO、という方々の発言を取り上げたビジョナリーな4本の記事を紹介します。

 

SXSW 2018で見た「AIブーム」の終焉

週間アスキーに掲載された、アスキーエキスパートの帆足啓一郎さんの「SXSW Interactive 2018」レポート記事です。3年間にわたって一貫して「人工知能」を調査の主テーマと設定して、関連のセッションの聴講をした結果を示唆に富んだ内容にまとめてくれている記事です。

SXSWにおける人工知能関連の議論の変遷を振り返ると、2年前は人工知能関連技術が最先端の研究としてもてはやされ、昨年は先進的な発想を持つ人にとっての差別化をもたらす技術として使われ始めた時期。そして、今年になってからはどの業界にいても活用すべきツールとしての認識されてきているという流れが見て取れるとのこと。

今年のSXSWでは、デザイナーやクリエイターなど、人工知能からは縁遠い業界の人が「人工知能を使ってみた」という趣旨のセッションが多数催されていたようです。たとえば、自動運転車を初体験するドライバーの分析や、モーターショーの出展ブースの設計において、従来は人間観察など定性的な手法が中心だった領域に対し、人工知能関連技術を使用した事例が共有されていたようです。

一方で、人工知能によるさーぴうの受け手側となる一般ユーザの人工知能の受入方にはまだ多くの課題が残っているとのことで、印象的なセッションとしてあげていたのが、Big Medium社の創業者 Josh Clark氏による人工知能のデザイン論の紹介。Amazon EchoやGoogle Assistantのような人工知能関連アプリでは内部のアルゴリズムが必ずしも高い確信度をもって判断できていない場合にも「断言」することが多くあり、人工知能の誤認識をユーザである人間が気づけないことによる社会に対するネガティブなインパクトが懸念されるとのこと。この問題を「AIのデザイン問題」と設定していて、人工知能による失敗を考慮したインタフェースを設定する必要性をのべています。

SXSWのAI関連セッションを聴講した印象として、人工知能のコモディティ化が進んできていると感じたとのこと。人工知能関連技術の活用の広がりとともにここ数年続いた「AIブーム」がいよいよ終わりを告げるとのことです。

そして今後の向かう先のひとつとして、「AI」は「Augmented Inteligence」(拡張知能)となっていき、人間には不得手な大規模データの解析などのために人工知能関連技術を活用する取り組みが増えていくのではないかと結んでいます。

 

さらばAI、これからは「拡張知能」と呼ぶ時代がやってくる

AIがこれからは「拡張知能」(Extended Intelligence)というとらえ方に向かいつつあるとレポートしているWIREDの記事です。

「人工知能(AI)という言葉に別れを告げ、これからは「拡張知能」と呼ぼう──」。そんな取り組みのひとつが、伊藤穰一が率いるMITメディアラボと米電気電子学会(IEEE)が始めた新たなプロジェクトとして紹介するところからはじまっている記事です。

MITメディアラボ所長の伊藤穣一さんは「AIを人間とは別のもの、あるいは人間と対立するものとしてとらえるのではなく、機械がわれわれの集合知や社会を拡張していると考えるほうが、より有益であり正確です」といっているとのこと。

MITメディアラボと米電気電子学会(IEEE)は6月22日(米国時間)、「拡張知能のための世界審議会(Global Council on Extended Intelligence)」という新グループについて発表。「CXI」という名でも知られるこのプロジェクトの関心領域は、顔認証のようなテクノロジーがさらに広く利用されるようになったとしても、人々が自身のアイデンティティをコントロールできる方法や、自動化が企業の利益や国民総生産(GDP)だけでなく、労働者の福祉にどのような影響を与えているのかを計測する方法を見つけることなどが含まれているとのことです。

 

【寄稿】AIは人間に教える存在に

「チェス元世界王者カスパロフ氏が予想する未来」という副題のこの記事は、チェスの元世界王者で、1997年に IBM のスーパーコンピューター「ディープ・ブルー」とチェス対局をして負けたとして有名なカスパロフ氏のThe Wall Street Journalへの寄稿記事です。

機械が生んだ知見は私たちの知見を増やし、望遠鏡が私たちの視覚を広げたのと同じように私たちの知能を拡大する。自覚や自己決定をはらむ自主性を備えた機械を人間が創造するには程遠い状況にあって、機械はますます高度な作業を習得しているが、その「能力と目的」はあらゆる側面において人間に頼りきりといっています。

「artificial intelligence(人工知能)」には、私たち自身の人工的なライバルのような響きがあり、AIは「augmented intelligence(拡張知能)」だと考えるべきだとのこと。

機械は知性を高め、私たちをより賢くしている。これまでと違うのは、機械がより速く正確な答えをくれるだけではないこと。機械が生む新たな知識は、私たちが世界に対する理解をつかめるのに役立つ。

つまり良い結果だけでなく新たな知識を生み出す。AIは信じられないスピードで人間の指示を処理するのではなく、自らのガイドラインを一から作り、私たちには見えないパターンを発見する。最高の戦い方を見つけるために人間の対局を大量に分析するのではなく、自らデータを生み出し、実世界に適用する規則を見つけることができるとのこと。

ただし知能や自律的な動きは自由意志や殺意とは違い、たとえ高度な制御がされていてもエレベータや自動車に乗るのに不安を感じることがないのと同じように、心配する必要はないとのことです。

 

BIからAI(拡張知能)への進化、QlikのCTOが語る

ITmediaマーケティングが掲載した、BIツールベンダーQlik Technologiesの日本法人であるクリック・ジャパンの記者発表をレポートした記事です。Qlik Technollogiesのビジョンとして、BIが人間によるビックデータの分析をさまざまにサポートして拡張知能に向かっていくという内容を報告してくれています。

Qlik 最高技術責任者(CTO)兼製品担当シニアバイスプレジデントのアンソニー・デイトン氏が示した今後の向かう方向の一つ目は「データレイク」。これまでのBIでは分析の目的をはっきりさせた上で、その分析に適したデータを蓄積するというアプローチであったが、それでは蓄積した後で「このような分析もしたい」といった別の要求が出てきても迅速にこたえられない。「データレイク」は非構造化データの管理と分析に適したアーキテクチャであり、あらゆるデータを生でそのまま収集しておくことを可能にするため、多彩な分析ニーズに対応することができるようになります。

次に示したのがQlikの新バージョンのコンセプトとしての、「高度なアナリティクス」から「進化し続けるアナリティクス」への移行。データ分析に人間の直感を持ち込むため、Qlikでは機械中心および人間中心のアプローチの組み合わせである拡張知能(Augmented Intelligence)を提唱する。「BIからAIへ」。そして、AIとは人間の知能を拡張する「拡張知能」へ。AIが浸透していくにつれ見えてきた、ひとつの方向性のようです。