まずは、AdverTimes(アドタイ)の広告におけるAI活用に関する記事を紹介します。つぎにセキュリティ分野、それから政治の分野におけるAI活用を解説している記事を紹介して、最後にフォーブスジャパンに掲載された東大松尾先生の対談記事をご紹介します。ディープラーニングはこれまでのIT技術とはすこし違う取り組み方をするべきで、軽いノリでリーんにやるのではなく、きちんとした対応をすればよく、実は日本企業には向いている分野であるということのようです。

 

AIを広告文脈で活用する3つの切り口:キーワードは「新しい体験」

アドタイに掲載された、若手人材の発掘・育成を通じて広告クリエイティブの発展を願う、「宣伝会議賞」の特別企画の連載記事の中のひとつです。博報堂アイ・スタジオのCREATIVE AI研究所長の北島さん等が二回にわたって執筆されています。

現時点で広告の文脈で人工知能が活用できる切り口は、およそ3つに整理できるとして
(1)ブランディング、(2)新しい表現の創出、(3)効率化 をあげています。

(1)の例として、とりあげているのが、強い個性を持ったロックバンドのアルバム発売と連携した、プロモーションの一つとしてのチャットボット。
チャットボットが尖ったキャラクター設定のため、汎用的なデータ学習ではなく相当量のシナリオデータを準備し、自然言語処理・言語感情解析処理・スタンプ画像など感情とトークを組み合わせ、意図した会話体験が成立するようつくりこみを行い、体験の幅広さを創出して、プロモーション対象であるロックバンドおよび発売するアルバムの世界観を伝えるものとなっているとのこと。

(3)の例として、とりあげているのが、地方自治体のゴミの分別案内チャットボット。捨てたいごみの種別を投げかけると、分別方法を教えてくれる。問い合わせ電話の削減とともに、ごみ分別に対する取り組みのPRにも寄与しているとのこと。
また、話題になっているポイントはいわゆる「神対応」で、いくつかの検索ワードに仕込みがあり、問い合わせによっては「雑談」とみなして乗ってくれるし、捨てたいものとして“妙なもの”を指定すると人生相談の名言を返してくれる。この気の利かせ方が受けて話題になり、認知が広がりPRにも成功しているもの。

これらの取り組みを通して感じているのが、人工知能技術単独で広告としてのコミュニケーションを成立させることはまだ難しいということ。人工知能の能力を表現に引き出しつつ、逸脱する結果に対するフォローなど、体験を成立させるための仕掛けのクリエイティビティも求められる。つまり人工知能が果たす役割を上手く限定することで、企画として成り立つよう制御することが必要なようです。

 

セキュリティの現場、AIはどう変えるか

ITproの「企業セキュリティ、七つの鉄則」企画の中の記事です。もともとITのセキュリティ分野は、早くから人工知能技術が活用されてきた分野のひとつとして、迷惑メールの振り分け機能やWebシステムへの侵入検知機能、不正侵入検知システムのネットワークパケット検知機能、ウィルス対策ソフトのマルウェア検知機能などをまず紹介しています。

さらに、これからのセキュリティ分野でのAI活用が期待されている側面として、人材不足の解消、人間による業務の代替をあげています。経済産業省の調査によれば、2020年には国内のセキュリティ人材の不足数は20万人に達するとのこと。そのような人材不足の状況の中で、特にAIが威力を発揮しそうなのがセキュリティアナリストの代替として、企業システムの莫大なデータやログを分析して、このリスク識別・分類のパターンをAIに学習させ、既知のリスクの識別・分類モデルを作り、攻撃パターンの検知ができるようにすることと説明しています。人間は未知のや新たな脅威への対応に集中できるようになるというものです。

 

国家を人工知能に委ねる時代の安全保障と、そのとき守るべき自由
「Innovative City Forum 2017」に登壇する慶應義塾大学准教授の神保謙氏への、国際政治学の見地からテクノロジーが導く近未来について聞いたWiredのインタビュー記事です。

神保先生の説明する、政治において人工知能が効果を発揮しそうな分野は、限られた資源の配分を行う領域とのこと。限られた資源の配分を考えていくことこそが政治の本質で、個人の利益の最大化を目指す集団では実現し得ない『全体の合理性』を追求するうえでは、人工知能が合理的で最適なプランを提示してくれるようになれば非常に強力なツールとして機能するだろうと解説しています。

一方で、市民の危機管理や国家間の安全保障といった領域において、AIが何か判断を下すことは難しいだろうとのこと。例としてあげているのが、「10万人の犠牲者を出すけれど、長期的に見れば国家を危機から救える選択があったとして、その決定をAIにゆだねることはできない」だろうという点です。倫理的決定をくだすこととも言い換えていますがAI時代の人間に残る最後の役割は倫理的結定をくだすとのことです。

 

人工知能は「ITで敗北した」日本企業のチャンスとなるか

フォーブスジャパンの、東大松尾先生と人工知能分野のベンチャー企業新谷の代表取締役社長金井氏の対談記事です。

導入部ではAIの未来について考える国際的なコミュニティも続々と設立されていることを紹介しています。アマゾン、グーグル、IBM、フェイスブック、マイクロソフトなどによって設立された「Partnership on AI」、ジェシカ・リビングストン、イーロン・マスク、ピーター・ティールらが立ち上げた「OpenAI」など。

松尾先生が、AIに対する日本企業の取り組み方の構造的な問題点、難しさを指摘する中で興味深い観点は、日本企業がこの20年間、IT・インターネットの分野が負け続けてきたが、ディープラーニングはこれまでの各種IT技術とのすこし違い、「きちんとした技術」であり、勉強して、マーケットを計算して、投資すれば生きるはずのものとのこと。したがって、これまでのITとは違って軽いノリで「リーン」でやろうとするのは間違いであるというのはAIへ本腰で取り組もうとする企業にとって重要な視点ではないかと思います。